𝓗𝓪𝓽𝓪𝓽𝓪

俺が端太(はたた)←ゴマキみたいに言ってみたが誰も嬉しくならない

「冬の日」は二度おいしい

※平気でネタバレするので注意してください

冬の日

冬の日

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作詞:hotaru(秋山澪) 作曲:Tom-H@ck(琴吹紬)

 

 

「冬の日」は放課後ティータイムの楽曲の一つです。

初めてこの曲を聴く前、「冬の日」という題名からアンニュイなメロディを想起していたものでしたから、転げ落ちるように軽快で楽しげなイントロに面食らいました。同じ理由でボーカルが平沢であることも予想外だったので、私の心の中の浜田が「お前が歌うんかい!」と言っていました。

そんな平沢のぽわぽわでまくしたてるような歌声と、途切れずに緩急なく同じ速度で走り抜ける軽快なメロディのセットがジェットコースターのようで、聴き始めるとアッという間に終わってしまう曲という印象でした。「切り揃えた髪が」の単調ちょい早口が聴いていてとても心地よくてオススメです。

 

 

またこの曲、歌詞とその背景を知ると、タイトルにもある通り全く違う切り口でもう一度楽しむことができます。

 

どんなに寒くても ぼくは幸せ

白い吐息弾ませて 駆けてくきみを見てると

 

切り揃えた髪が とても似合ってる

でも前髪を下した きみの姿も見てみたい

 

何から話せばいいのかな

「好き」から始めていいかな

舞う雪 踊った気持ちみたい

なんか うれしいね

 

こんなにあざやかな 白く光る街

きみとぼくで歩きたい 手をつないでならいいのにな

 

いたずらな笑顔が とても似合ってる

でも頬を赤くして 照れてるきみも見てみたい

 

どうして言葉が出てこないのかな

辞書でも引いてみようかな

降る雪 止まない気持ちみたい

ちょっと せつないね

 

こころの奥で

大きく息をしよう

 

胸が痛むことも増えた気がするけど

でもその分きみのこと 想ってるって気づいたよ

やっぱりね

 

明日もいつもの場所に行くよ

駆けてくるきみを待つよ

初雪待つような気持ちがほら

もっと弾んで

 

何から話せばいいのかな

「好き」から始めていいかな

舞う雪 踊った気持ちみたい

なんか うれしいね

 

恋をした乙女の心象をテーマにすることに定評のある放課後ティータイムの数ある曲の中で、「ぼく」という一人称(男性?)から始まるこの曲はひときわ異彩を放っています。

曲の主体の想い人の容姿が克明に描写されているのも珍しい点です。

切り揃えた髪が とても似合ってる

でも前髪を下した きみの姿も見てみたい

いたずらな笑顔が とても似合ってる

でも頬を赤くして 照れてるきみも見てみたい

これりっちゃんのことじゃん!!!!!(歓喜)

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けいおん! Ⓒかきふらい/京都アニメーション・桜高軽音部・TBS

律厨(リッチュー)の私としましては喜びの涙を流さずにはいられません。語彙力が無く

「律、愛してる」

とか

「律、キレイだ...」

とかばっか言ってる私が、この曲を借りることで歌詞の中の「ぼく」に憑依し3分強も愛を語ることができるのです。

 

 

 

ただ、歌詞たった4行だけで

「律だ律だブヒヒ」

と決めつけてはしゃぐ姿は滑稽に映るかもしれません。「切り揃えた髪」や「いたずらな笑顔」という情報だけでは、「これは園子へのラブソングではないか」と判断することも可能になってしまうのです。

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名探偵コナン Ⓒ青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS

しかし「冬の日田井中讃美歌説」*1はアニメ「けいおん!」という強力な後ろ盾があり、10年前には既に立証されています。というのも「けいおん!」のエピソード第13話、この曲と(ほぼ)同じ「冬の日!」という題が冠されております。

 

 

 

「冬の日!」の演出は北之原孝將さんが担当しました。北之原さんはアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」において、多様な環境音や主人公のキョンを離れた第三者からの視点、長門の手抜き長回しなどが醸し出すアンニュイな空気感で人気を博したエピソード「サムデイインザレイン」の演出を担当したことで有名です。

「冬の日!」も「サムデイインザレイン」と同様物憂げな雰囲気の中始まります。冬の寒空の下、平沢の鍋パをしようという誘いを蹴ってそれぞれの予定を敢行しようとする軽音部の4人。途中4人とも不穏な事態に陥るが、平沢のKYなメールに和まされ、最終的にいつも通り5人で集まるというのが大まかなストーリー展開です。

その中で部長田井中の受難が楽曲「冬の日」に大きく関わっています。彼女はある日家のポストにあったプリントを何の気なしにピックして読んでみると、こんなことが書かれていました。

 

どんなに寒くても ぼくは幸せ

白い吐息弾ませて 駆けてくきみを見てると

 

切り揃えた髪が とても似合ってる

でも前髪を下した きみの姿も見てみたい

 

この内容を見て田井中は、自分宛てのラブレターではないかとカン違いし、1人で舞い上がってしまいます(かわいい)。「前髪を下したきみの姿も見てみたい」を真に受け、カチューシャを外した自分の姿を鏡越しに見て自嘲するシーンは余りにも有名です(かわいい)。

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けいおん! Ⓒかきふらい/京都アニメーション・桜高軽音部・TBS

このラブレター、実は秋山が書いた詩であったことが判明したときの田井中の心中は、穏やかとはとても言えなかったでしょう。部活のムードメーカー、活発な自分を演じるために埋めていた乙女心を掘り返され、もてあそばれたことによる恥ずかしさは、もし他の人に一部始終を知られていたらそれこそ秋山初年次の文化祭に匹敵するものになっていたのではないでしょうか。

そんなわけで当然田井中はこの詩はボツだとつっぱねましたが、その後どういうわけか受肉し「冬の日」として放課後ティータイムのアルバムにちゃっかり収録されました。どういうすったもんだを経てそうなったのかは、桜高七不思議のひとつです。

 

 

 

結論→以上のことを踏まえて「冬の日」をもう一度聴いてみたら、勝手な妄想がとても捗ります。

ほかの4人が何も知らず「冬の日」を演奏するなか、りっちゃんだけが誰にも打ち明けられるはずのない恥ずかしい思い出を胸に抱えているのです。イントロで「ズデデデデデデデデデ」とドラムを連打するたびに、カン違いして骨折り損のドギマギをしていたあの「冬の日」を思い返して1人でハカカーッ//ってなっているのかもと考えると、かわいさここに極まれりと言ったところでしょう。

 

 

 

一度目は歌を純粋に楽しみ、二度目以降は演奏者の心情に気を配って楽しむことも一興でしょうか。

 

 

*1:ゴロがよろしい。